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       「人は どこから来たか/何者なのか/何処へ行くのか」 
   D'ou venons-nous ?  Que sommes-nous ?  Ou allons-nous ?  

高校生の頃、ゴーギャンの絵画に惹かれました。 豊かな色彩の面に、自分の求めているものがあるように思いました。絵画について、それ以上、追求することはなかったのですが、彼の残した言葉が、奇妙に、今まで心の底に沈潜していたような気がします。 還暦を過ぎたこの頃、その言葉が、思い出したように、自分の気持ちの外に出てきました。
まさしく、「人は」 でなくて、「ぼくは」 と置き換えても、良いと思います。
ぼくにとって、自分の本当の心に沿って生きてこれたのは、少年時代までだったと、今では思えてきます。親の庇護の下で、何の不自由もなく過せたのが、第一の理由でしょう。 誰でもが少年時代にそうであったように、将来に対して、漠然とした夢を持っていました。ぼくの夢は、学者になるという、そこまで限定した志望はなかったかもしれませんが、「知る」 ということに対しての憧れと、この作業を一生やってみたいとの思いを持っていました。
皇国の雰囲気を、幼いながらも経験した、戦前の僅かな期間。戦後の誰もが貧しくて、必死に生きていた時代。アメリカ進駐軍を子供心に、一種の憧れの眼差しで見ていた時代。新しい文化をもたらす使者に見えていました。以後、戦後の民主教育というもので、育ちました。
小学校最終学年に、東京から大阪に転居しました。東京の郊外の生活から、大阪の都会の真ん中の生活に変わりました。昆虫採集して持参したアゲハチョウも居なくなり、中学校で勉強に励みました。ぼくの気持ちを幸福に満たしてくれた人生は、この中学時代までだった。 「ジャンクリストフ」という小説で、音楽の世界を知りました。
高校時代は、勉学にまったく気持ちが乗りませんでした。名門校という所に、いやいや通っていたのでした。家業も思わしくなくて、高校を出て直ぐ、ある文化的な営業品目を扱っている会社に入りました。中学の時に読んでいた「中学生の友」という学習雑誌に、社内の学習システムで勉強して大成したという、その会社の社長の立身出世話があり、これだという思いで、入ったのでした。
40年間、ぼくは、利益を追求する組織として 「株式会社」 には、少しも、馴染なかったと云えます。自分の気持ちと法人格としての会社と、いつも隙間がありました。 文化的な事業の会社で働いていて、何か世の中の進歩に、貢献できるということだけが、ぼくの働く意欲を支えていました。 ただ、アカデミックで文化的を標榜する会社の表と内容は、程遠いように思いました。乖離に対して、自分の中で常に、反抗していました。
生活のために、また、表面的な営業の品目と対象が、 「知る」という、 ぼくの根源的な欲求と一致していたので、40年間も続いてしまったのでしょう。 良かったのか、悪かったのか?
会社も卒業して、妻も先に逝ってしまいました。ひとりになって、一個の剥き出しの、存在になりました。
青年期に覚えた 「スケッチ」と 「ギター」という趣味が、ぼくの今の人生を、幾分楽しくしてくれています。ありがたいことです。 「知る」という哲学の心と 「感じる」という芸術の心と、ぼくには未だ、そんな大そうな、表現するほどのものはありません。これから、二つながらの道を、少しずつ、勉強して行きたいと思っています。
ぼくは、何者なのか? 最近、なんとなく自分が、他者から本来の姿で認知されていない、何か誤解されている、という感覚があります。自分が自分を理解している姿と、他人がぼくを見ている姿とが、どうも違うようなのです。最終的に、他人にどのように思われても良いのです。恐ろしいのは、そのことで、ぼく自身が自己を見誤ってしまうことです。 自分を信頼して、生きて行くのには、今までのぼくには、 「知る」 という作業が、少なすぎたように思います。 人間として生まれて、底が浅いと感じています。 「知る」 という作業をすることによって、ぼくが、どこから来て、どこへ行くのか探求したい。 それだけです。
ぼくが、気持ちの上で、勉強したと思える時期は、中学生までです。すべてを、その頃に戻して、これから勉強します。 
散歩、読書、スケッチ、ギターも、ぼくの勉強のツールです。
(2003年11月)


2003年の気持ちが、今でも、全然変わっていないことが、分かりました。人生100年、勉強します。
(2020年6月27日)
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