自然に帰れ、という言葉は、間違ったルソーの表現であり、彼の言葉には存在しない。日本人が勝手に作ったようだ。しかし、思うにルソーは何故、日本で人気があるのだろうか分からない。ぼくのように、気持ちに何かフィットする点があるのか。
自然に帰れ、という言葉が間違っているにしても、ルソーが本心では憧れ求めた境地であるのは確かだろう。ルソーは、表向きは市民社会というものの原理を表現した。しかし、心の中では、現実にはない理想として、自然人の徘徊する、充足した自然を願っていたのだと思う。だから、本来なら普通の素朴な個人であった方が良かったのに、彼があまりにも有名になってしまった為に、人生の最終では、世間から総攻撃を受けて、孤独な散歩者となってしまった。彼の望むところであったかもしれないが、これは世間というものの見当違いな誤解である。この点では、18世紀のヨーロッパと、今の日本と変らないのであろうか。